中国経済クラブ(角広勲理事長)は3月16日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。大和総研(東京)シニアエコノミストの神田慶司氏が「来年度の日本と世界経済の展望」と題して講演。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ景気の回復を予想するものの、ロシアのウクライナ侵攻が長期化した場合は大きな下振れリスクになると指摘した。要旨は次の通り。
オミクロン株が落ち着きつつあり、2022年度の実質国内総生産(GDP)の成長率はプラス3・5%を見込んでいる。資源価格の高騰は予断を許さないが、日本の家計消費を大きく押し下げるほどではない。消費の低迷やコロナ禍での給付金などで家計の過剰貯蓄が約60兆円あるからだ。ガソリンなどのコスト増の影響を緩和するだろう。
3・5%成長は感染状況が比較的安定し、Go To トラベル事業やインバウンド(訪日外国人客)の受け入れの再開が大前提。半導体不足も解消し、輸出は増えるだろう。消費と輸出の両方が増えれば効果が期待できる。「悪い円安」が叫ばれているが、製造業の輸出が潤えば非製造業にも波及する。徐々にプラス面が出てくるのではないか。ただ若年層は将来不安が強く、所得が増えても消費はそれほどではない。
最大のリスクはウクライナ情勢と変異株だ。ウクライナ情勢は不確定要素が多く、現時点で調べた結果を紹介する。資源価格の上昇でインフレが加速するとされるが、日本は欧米と違って価格転嫁が難しい。多くは企業が負担し、貯蓄も十分にあるので家計への影響は表れにくい。
輸出入の面では、日本の輸出に占めるロシアの割合は1割以下にすぎず、影響は大きくない。気になるのはエネルギーや資源関係の輸入だ。原油の輸入は1割を占める。アルミニウムは2割がロシア産だ。半導体不足の時のように、サプライチェーン(供給網)に影響が出る可能性がある。
ウクライナ情勢で日本経済は悪化するが、景気が腰折れするとは言い過ぎだ。ただ戦火が拡大し、西側諸国と武力衝突にまで発展した場合は、欧州との交易関係が厳しくなるなど影響が大きくなる。
新たな変異株が出るとサービス消費が回復しない。変異株とウクライナ情勢で人とモノの動きが停滞したら、成長率はプラス1・5%程度になるだろう。マイナスではないが、コロナ禍前の19年度の水準に及ばない。3年かけても水準が戻らないのは厳しい。
企業の稼ぐ力が弱い、社会保険料の増加など、日本経済には五つの問題点がある。労働者の報酬は増えているが、社会保険料に流れているので労働者の可処分所得が低迷している。それが将来不安につながり、若年層がお金を消費に回さなくなっている。社会保険料改革は経済対策だ。痛みを伴うが、岸田政権が目指す「新しい資本主義」の実現には、これらの課題に取り組む必要がある。
(了)