中国経済クラブ(角広勲理事長)は4月22日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。元AERA編集長でジャーナリストの浜田敬子氏が「ポストコロナ時代の働き方が地方を変える」と題して講演。リモートワークなど多様な働き方を促すことで多彩な人材を確保し、新しいビジネスを創出してほしいと訴えた。要旨は次の通り。
日本ではこれから加速度的に少子化が進むだろう。生産年齢人口が減る中、働き手をどう確保するか。女性とシニアの活躍が言われ続けているが、女性の雇用は時代の波の調整弁に使われてきた。
私が新聞社に入った1989年は男女雇用機会均等法(86年施行)を踏まえ、多くの企業に総合職で女性が入った。しかし、どこもキャリア育成のビジョンは備わっていなかった。結婚や出産を機に退職して、一度専業主婦になると、10年ブランクのある人を企業はそう雇ってくれない。
女性が活躍しやすいよう時短勤務や企業内託児所の整備が進んでも、2008年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災で採用市場はまたへこんだ。
なぜ日本でこんなに女性が働きにくいのか。管理職登用が進まないのか。長時間労働に加え、女性自身にも「家事や育児は女性がする」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が根強い。「若い女性は管理職になりたがらない」という経営者もいるが、家に帰らず長時間働く男性を見ているから仕方ない。
ここで新型コロナウイルスの時代がやってきた。これからはリモートワークが地方企業にはプラスになる。優秀な人材を採用できる可能性が広がった。
例えば官僚でも家族と大阪に住みながら霞が関の仕事をしたり、時短で大臣秘書官をしたりという例もある。リモートならパートナーの転勤で仕事を辞める必要はない。無駄な会議を省いたり、紙の資料を節約できたりする。どこでも働けるということは特に若い人には重要な要素だ。
この働き方は新型コロナが落ち着いても戻らないだろう。20代の7割は在宅ワークを求めているというデータもある。在宅と出社のハイブリッドでもいいし、子どもが寝ている早朝や深夜で自分が集中できる時間に作業する人もいる。
副業も増えるだろう。業務を効率的に回すことで時間が余る。自分が持っているスキルや知識が他でどこまで通じるか、役立てられるかと考える人は多い。フルタイム勤務が絶対だという働き方は人材獲得が激化する中で勝てなくなる。
常に新しい顧客のニーズを見つけるには、多様な人材の目線が必要だ。多様な働き方を認めれば多様な人材が集まる。女性社員が増えたことで新しいビジネスが広がった会社の例も少なくない。
ポストコロナ時代、どんな方向に社会が変わっても、企業は社員を守らないといけない。人権感覚を大切にする企業で働きたい若い世代は増えている。その価値観が愛される企業にぜひなってほしい。
(了)