中国経済クラブ(苅田知英理事長)は7月20日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏が「コロナ後に向けた国内観光の展望~Go To トラベルと全国旅行支援の経済効果」と題して講演。インバウンド(訪日外国人客)や海外旅行の需要が本格的に戻るには時間がかかるとし、国内客への観光PRが重要と訴えた。要旨は次の通り。
新型コロナウイルスの流行「第7波」が来たが行動制限がなく、この3連休もかなり人が動いていた。重症化しにくいことや、少人数で密を避けるなどコロナ禍の中の旅行スタイルが確立したことが背景にある。一部の宿泊施設ではキャンセルより新規予約数が上回っている。
国は、住む地域を問わず割引を受けられる「全国旅行支援」を今月始める予定だった。宿泊代の割引だけでなく飲食や買い物に使えるクーポンも配り、1人1泊当たり最大1万1千円を支援する内容。今やる必要はなく、感染者が落ち着いてから始めればいい。
全国旅行支援で、外国人客の不在で減った平日の宿泊も埋まる。宿泊事業者はコロナ禍前の2019年を上回る利益が出て初めて借入金の返済ペースを上げられる。効果に期待したい。
一方、インバウンドや海外旅行の本格的な再開はまだしばらくかかる。国は20年までに、訪日客を4千万人に増やす目標だったが達成できず、21年は24万6千人にとどまった。19年と比べてほぼ99%の減少。日本人の出国も97%減った。中国などの国際線の再開も時間がかかる。
地方の観光業界はこの1年、国内の観光客にどう地域の魅力を発信するかに主眼をおいてほしい。観光地や宿泊施設をPRする絶好のチャンス。これまで海外旅行に行っていた客層を取り込むことができる。
広島に観光客を呼び込むには、もっと最高級クラスや滞在型のホテルがあっていい。例えば京都には1泊10万円以上のホテルが複数あり、コロナ禍の中で海外旅行に行けない富裕層の受け皿になっている。交流サイト(SNS)などで話題になれば街全体の知名度アップにつながる。
広島空港(三原市)を地元の人が使うことも必要。特に格安航空会社(LCC)は地域の人が乗らなければ路線の維持は難しい。乗客が増えれば他の会社の就航も見えてくる。LCCを使い慣れたインバウンドの受け入れ再開に向けても、路線を増やすことが理想的だ。
観光業界を悲観はしていない。地域のグルメや肌で感じる雰囲気など、旅行は「リアル」でなければ成立しない。今の円安の状態で海外からの受け入れが広がれば、訪日客も含めて旅行需要は必ず戻る。来年には広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)があり、注目される。まずは日本人に愛される街になることを期待している。そうすれば外国人も呼び込める。
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