活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は2月15日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。SMBC日興証券(東京)の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストが「2023年の世界経済の見通し」と題して講演。日本の物価高の先行きは米国のインフレ抑制次第とし、日銀は金利を引き上げないとの見方を示した。要旨は次の通り。

昨年の一大事は為替が1ドル=150円台まで円安になったこと。米国が金利を上げたからだが、連邦準備制度理事会(FRB)は来年から利下げをするとしている。ただ利下げができるかは米国のインフレが止まるかにかかっている。

新型コロナウイルス禍で半導体などの供給制約が起きた。景気回復が進んでもなかなか製品が手に入らず、ロシアのウクライナ侵攻などもあって資源価格も上がった。コスト上昇で望ましくないインフレが起きたが、長引いているのは米国の消費がインフレでも強かったからだ。

コロナ禍の20年に米国は景気対策で現金を配るなどした。貯蓄が増え、値上げしても売れた。いま思えばこの景気対策でインフレが起きた。ただ22年のクリスマス商戦は厳しく、貯蓄を使い切ったのではないか。

米国では店頭に並ぶ商品の物価は下がってきている。一方で家賃や人件費はまだ高く、利下げができない。家賃は値上がりが止まるだろうが、雇用が逼迫しており人件費は上がっている。

コロナ禍からの回復で飲食店などで人材獲得競争が起きている。価格を上げても売れるから賃金も上昇している。ただ、人手が足りなくても、消費が低迷すれば賃金も下がり、物価も下がる。年末にかけて落ち着くのではないか。

米経済に影響がある中国は問題が山積している。過剰債務、過剰投資体質で、借りた金で不動産投資をしているような状況だ。人口が減れば家賃相場が崩れ、不動産バブルは崩壊する。

中国の経済対策は、国民の暴動や共産党への反感を抑えるのが目的。共産党独裁の中国では政権交代がなく、失業率が増えると暴動が起きる。ゼロコロナ政策の撤廃も暴動が理由だ。中国が世界経済を引っ張ることは期待できない。

世界の景気は夏くらいまでは厳しい。その後、物価高が収まると日本にどんな影響が出るか。米国のインフレが収まり、金利が下がれば、今年後半にかけて為替は125円くらいを目指していくのではないか。円高で原油高も収まれば、日本でも値上げが落ち着いてくる。

政府が日銀の新総裁として提示したのは経済学者の植田和男氏。学者なので政治の声に流されず、物価が上がれば金融を引き締めるだろう。ただ外部環境はまだ利上げではない。私は大幅な日銀の政策修正で金利が上がるということは想定していない。

(了)

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵