活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は6月21日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員が「アフターコロナ期の日本経済」と題して話した。物価上昇などの下振れ懸念が残るものの、景気は緩やかな回復基調を維持すると分析した。要旨は次の通り。

これまで新型コロナウイルスの感染規模で景気が左右される状況が続いてきたが、5月に感染症法上の位置付けが「5類」に移った。景気へのマイナス影響は弱まり「アフターコロナ期」に入ろうとしている。感染者数が増えても、景気への影響はほとんどないだろう。

回復してきた景気を持続させるため、成長と分配の好循環を達成できるかどうかが大きな鍵を握る。消費の拡大が企業の業績を改善させ、雇用が増えれば賃金も上がるという流れだ。アべノミクスで企業業績、雇用に次いで賃金が上がりかけた時期にコロナ禍になった。今、再び好循環の動きが高まり、賃金もようやく上がってきた。

物価上昇や海外経済の減速の懸念はあるが、景気の状態は緩やかに持ち直していると考えている。人の流れが増え、宿泊や飲食など対面型サービスを中心に需要が拡大している。対面型サービスは今夏ごろ、コロナ禍前の水準を取り戻せるのではないか。インバウンド(訪日客)の増加が成長を押し上げるが、地域間の格差も出てくる。

一方、小売業などの動きは4月ごろからやや鈍っている。物価上昇で買い控えが進んでいる恐れもあるが、夏のボーナスの支給額が増えそうなので、大きな落ち込みは回避されると期待したい。

中国など海外経済の悪化で落ち込んでいた輸出も少し持ち直しの動きが出ている。半導体不足による制約を受けてきた自動車の生産が上向いているのが要因。各大手メーカーの生産計画は強気で、地場の自動車産業がある広島県を含め国内経済の明るい材料になる。

実質国内総生産(GDP)はコロナ禍後の最高水準を今年1~3月期に更新した。コロナ禍前で最高だった2019年7~9月期を超えるのは24年4~6月期ごろだろう。ペースは緩やかかもしれないが、着実に回復の動きは続くとみている。

海外では物価上昇を阻むため、金融の引き締めが進んできた。物価上昇のペースが落ち着き、米国の利上げは最終局面に入っている。海外経済も今後、回復していくだろう。日本の金融政策は引き締めの方向で修正されると予想するが、ペースは非常に緩やかになるとみている。住宅ローン金利の上昇が景気を押し下げる懸念は小さい。

日米の金利は懸け離れており、円安で輸入物価が押し上げられた。輸入品やエネルギー価格の高騰が景気に大きなマイナスになってきた。現在の円安に歯止めをかけるため、日銀が金融政策の変更に踏み切る局面もあるかもしれない。

(了)

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵