活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は10月19日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。共同通信政治部長の杉田雄心氏が「今後の政局展望/どうする岸田首相」と題して講演。税収増を国民に還元する所得税減税を実現できるかどうかが、今後の注目点になるとの見方を示した。

最近の岸田政権はうまくいっていないことが多い。内閣改造の人事もうまく機能せず、今月の衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の両補欠選挙で、自民党はやや厳しい戦いを強いられている。解散風はちょっと弱まり、ひんやりとした秋風が政権に吹いている。

岸田文雄首相は本音をなかなか明かさない人だ。党本部1階のショーケースに、党役員の座右の銘が書かれた色紙が飾ってあり、岸田さんの色紙は「天真爛漫(らんまん)」。天真爛漫なので非常に考えが読みにくい。自民党のベテラン議員からも「一体何を考えているんだろうな」と聞く。

9月の内閣改造と党役員人事は「1勝3敗」と総括している。女性閣僚が過去最多と並ぶ5人になり支持率が上がったが、副大臣・政務官は女性ゼロで帳消しになった。小渕優子党選対委員長は2014年に「政治とカネ」問題があり、選挙の顔になれていない。萩生田光一党政調会長を官房長官にする人事は幻となり、刷新感を出せなかった。

1勝は、岸田さんの後継を虎視眈々(たんたん)と狙っているといわれる茂木敏充幹事長の続投だ。近くに置いておくことで封じ込めるという発想だと思う。国民民主党副代表だった矢田稚子元参院議員の首相補佐官起用は驚いた。永田町では巧みな人事だといわれている。

共同通信は年内の衆院解散は難しいと報じている。ただはっきりした言質が取れていない。状況的には難しくなっているけど、ほんのちょっとだけまだ余地がある。でも徐々に徐々に年内解散は遠のいている状況だ。

岸田政権の支持率が上がらない理由はいくつかある。難しい問題が出るにつれて、記者会見で官僚が書いた文章を読むだけになっている。安倍晋三元首相が1度失敗して再チャレンジしたというような過去の長期政権にあるストーリー性も岸田さんには見えない。

官邸は経済対策で支持率を戻したいと考えているようだ。税収増を国民に適切に還元し、所得税減税につながるかどうかが注目点だ。税について国民に信を問うのは民主主義の基本。解散風が出てくる可能性もある。

二つの補選も岸田政権の分水嶺(れい)になるかもしれない。補選、臨時国会、減税で岸田政権がもう一回浮揚できるか。減税という過剰な期待が失望に変わると、支持率の「低空飛行」がさらに低くなる。この秋は岸田政権の正念場と言っていい。

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵