活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は11月29日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。第一生命経済研究所の柏村祐主席研究員が「チャットGPTがもたらす生産性革命」と題して話した。米新興企業オープンAIが開発した「チャットGPT」など対話型人工知能(AI)の性能は急速に進化しており、活用が経営の成否に直結するとの見方を示した。

対話型の生成AIはインターネット革命以上のインパクトがあり、ホワイトカラー層全体に関わってくる。チャットGPTのサービスのうち、精度の高い有料版は国内の利用者が非常に少ないが、世界中で使われている。

生成AIを使えば情報を収集、整理した上で文章などのたたき台を瞬時に作れる。プログラミング言語を知らなくても、簡単な質問や指示を書き込めば、画像や動画を盛り込んで答えや提案を返してくれる。米マイクロソフト社も対話型の新たな業務支援サービス「コパイロット」を提供している。生成AIのサービスは米国と中国の企業がしのぎを削っている。

テクノロジーが浸透するスピードはどんどん速まっている。飛行機や自動車が数十年かかった利用者数に、交流サイト(SNS)は数年で達した。AIが人間の知能を超える「シンギュラリティー」が2045年に訪れるとも言われるが、生成AIの現状を踏まえて早まるという議論が出ている。

こうした変化の中で、人がする仕事に必要とされるのは3点。現状分析だけではなく未来を創造する「クリエーティブ」、細やかなおもてなしをする「ホスピタリティー」、稼ぐ組織を培う「マネジメント」だ。特にマネジメントが大事で、肩書に関係なく求められる。働く人に成長を実感してもらう取り組みがないと、人手不足の中で若い人が流出してしまう。

また、日本のホワイトカラー層は、AIが得意な資料作成などに時間をかけ過ぎで、生産性が低い要因になっている。税理士や弁護士などの専門職は生成AIを文書案の作成に使える。仕事上の電子メールの文案も速やかに作成できる。こうした作業を効率化した上で、もうかる仕組みなどを考えることに時間を割くべきだ。

AIの活用は2次元にとどまらない。人型ロボットへの応用も進み、車の自動運転も発展させる。偽情報の生成など影の部分もあるが、企業の経営者はデジタルを軸に考えないとますます稼げなくなる。テクノロジーは使ってみるところから始まる。その中で、そもそも自分はどうしたいのかを考える構想力を鍛え、生成AIから良い答えを引き出す質問力も磨いてほしい。

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵