活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は2月21日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。明治大政治経済学部教授の海野素央氏が「2024年米大統領選挙 バイデンとトランプの選挙戦略」と題して話した。トランプ氏が被告の刑事裁判が開かれる時期や、ヒスパニック系や若者の支持の行方が大統領選の鍵を握ると展望した。要旨は次の通り。

なぜ81歳のバイデン氏が立候補したか。モチベーションは「トランプ氏と共和党に破壊されようとしている米国の民主主義を守る」ことだ。日本人の多くは「民主党にはバイデン氏しかいないのか」と思っているだろう。50代の待機組がいるのだが、資金調達能力が抜群のバイデン氏に挑戦できない。

トランプ氏は四つの刑事訴追を受けているが、米国では立候補できる。3月中には共和党の大統領候補になると思う。トランプ氏は、大統領選の投開票日の11月5日の後に裁判を始めたいと考えている。選挙に勝てば司法長官に捜査の取り下げを命じることができ、自身に恩赦を出すこともできるからだ。

もし裁判が早く始まり、公判のインターネット中継を認めたジョージア州で開かれれば、トランプ氏は裁判を選挙キャンペーンの舞台、いわゆる「トランプ劇場」に変えるだろう。

イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの侵攻も大統領選に直結している。バイデン氏は女性や若者、アフリカ系、ヒスパニック系、アラブ系などの移民系で票を取る。だが、バイデン氏がイスラエル寄りのため、パレスチナに同情的な若者とアラブ系が離れた。投開票日までに停戦するように動くべきだ。

また、バイデン氏はオバマ氏と比べ、ヒスパニック系に弱い。トランプ氏が新型コロナウイルス禍に作った不法移民を強制送還できる法律をすぐに撤廃せず、メキシコ国境の壁の建設も再開したからだ。ヒスパニック系は「裏切られた」思いだ。トランプ氏はヒスパニック系の票を獲得したら勝てるとみている。

バイデン氏は20年の大統領選で自身を支持した米人気歌手テイラー・スウィフトさんの力を今回も借りたい。支持を得られれば若者票が戻る可能性があるが、支持表明はない。おそらくガザ侵攻が引っかかっている。

バイデン氏が激戦のミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの3州を取れば勝てるだろうが、ミシガン州を落とすと負ける可能性が高まる。アラブ系が多いミシガン州はトランプ氏が優勢で、票を取り戻すにはやはりガザの停戦だ。

トランプ氏が返り咲いたら日本との関係はどうなるか。米国製の戦闘機の購入や、在日米軍の駐留経費の大幅増額などの圧力をかけてくると考えられる。日本が渋ると、日本製品に高い関税をかけると脅しをかけてくるだろう。

日本にトランプ氏の脅しや圧力に屈しない、ディール(取引)にディールで応じられる政治家がいるのか。非常に大きな疑問を持っている。

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵