活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は5月28日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。政治ジャーナリストの細川隆三氏が「岸田政権の課題~混迷する政局の行方」と題して話した。自民党派閥による裏金問題が政権運営に与える影響や岸田文雄首相の衆院解散の戦略を解説。今夏までの動向が政権の命運を決めるとした。要旨は次の通り。

岸田政権の課題は山積みで展望は暗い。岸田氏には総裁選前に衆院解散を打ち、無風の中で再選を果たしたいという基本戦略がある。昨年、解散のチャンスは2回あった。5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)後の通常国会と暮れの臨時国会。マイナンバーの混乱や裏金問題などで支持率が下がり、できなかった。そうそうチャンスは来ない。

やはり裏金問題が岸田氏の政権基盤を非常に脆弱(ぜいじゃく)なものにし、解散時期に大きな影響を与えている。政権を支えていた主流派は岸田派と麻生派、茂木派。それに安倍派だった。この4派閥を足すと自民党議員の7割だ。裏金問題で安倍派の議員からの不満は大きく、派閥の解消で麻生太郎氏や茂木敏充氏から反感を買ってしまった。

政治とカネの問題で一番やらないといけないのは、政治資金の流れを公開することだ。政策活動費は党から政治家個人に渡すお金。(受け取った側は)何に使ったのか全く説明する必要がない。ここまで問題が大きくなった以上は、使った分は項目だけじゃなく、全て公開する。この問題で岸田氏は非常に正念場だ。なぜ岸田氏から本気度が伝わってこないのか。

経済や安全保障、少子化など待ったなしの課題も山積みだ。岸田氏と同じ宏池会出身の大平正芳元首相もいろんな政策を打ち出し、国民の審判を仰ぐスタイルの政治家だった。岸田氏も政策を堂々と訴え、正直に国民に説明する。防衛費増額や少子化対策の負担などをしっかりと説明する。そうした姿が見受けられないのは、非常に残念だ。

首相に一番大事なのは信頼感。政策での失敗は挽回できるが、唯一挽回できないのが信頼。岸田氏がよく言う傾聴力、決断力も非常に大事だ。決断したことを説明する説得力や演説力もそう。この五つは政治家に限ったことでなく、経営者にとっても同じだ。

岸田氏が首相を続けるためには衆院解散を打ち、選挙で勝つか、議席減少を最小限に食い止める必要がある。仮に6月解散に踏み切っても、自民党と野党ともに過半数に届かない可能性があり、政局の混迷は極まる。また岸田氏が政治とカネの問題の責任を取り、身を引く可能性もある。8月までの3カ月間で岸田氏の命運は決まる。それほど非常に厳しい状況にある。

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵