活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は6月27日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。共同通信特別編集委員の久江雅彦氏が「日本の安全保障のゆくえ」と題して話した。防衛装備の増強が図られる中、少子化による自衛隊の人員不足を問題視。組織改革の必要性を説いた。

2001年の米中枢同時テロ以降、米国は同盟国に自国の防衛を委ねる姿勢に転換した。米ソ冷戦時代と違って目に見えず合理的判断ができない相手に攻撃され、今までにない安全保障環境となった。

自衛隊や防衛省の中枢ではここ20年以上、長期的に米軍が日本への関与を弱め、いつか引くという撤退論がささやかれている。防衛力の抜本強化へ日本政府が23~27年度に総額43兆円の防衛費を投じると決めたのもその流れの一つ。うち15兆円を持続性・強靱(きょうじん)性に充てたのが最も重要だ。自衛隊の施設は数年前まで和式トイレが多く、倉庫はかなりの割合で旧耐震構造だった。やっと一般社会並みの施設を造れる。

今秋には、日英とイタリアの次期戦闘機の共同開発を管理する国際機関がロンドンにできる。戦闘機や潜水艦にはその国の最高レベルの技術が詰まっている。複数国で造ると良い物ができてコストも安いため、国際共同開発が世界のスタンダード。売る時には外交的ネットワークもできる。

共同開発に反対する意見もあるが、そうすると日本に最新鋭の戦闘機は要らないことになる。防衛協力は外交を支えるツールになる。国際紛争を助長させない輸出基準も不可欠だ。

サイバー対策が次の臨時国会で最大の争点となるだろう。戦争の目的は敵性国家のリーダーの意志を屈服させて従わせることであり、ロシアとウクライナはネット空間での戦争も激しい。日本の対応が急務だ。

最も問題なのは少子化による自衛隊の人手不足だ。訓練や災害派遣のため10代後半~30代が最前線を担うが、その年代が減っている。いくら戦闘機を買っても人がいないと動かない。パイロットや潜水艦乗りは体力も含めたえりすぐりの人材だが、母数が減ると適性のある人も少なくなる。

自衛隊の人員や予算の硬直化も目立つ。人員の割合は陸海空で約6対2対2の割合。制海権、制空権を考えると、もっと海上と航空の自衛隊に人員を割くべきで、陸上自衛隊の割合が多過ぎる。

どんなに装備をそろえても人員がいない。だからこそ絶対に戦争をしてはいけない。一定の抑止力が要る。悲しいが、仕組みや装備だけが充実し、中身が伴わないのが日本の安全保障の行方だ。政治家は早期にこの問題に向き合わないといけない。

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵