活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は7月18日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。上智大総合グローバル学部教授の前嶋和弘氏が「アメリカ大統領選挙の行方と世界、そして日本」と題して話した。「(ほぼトランプ氏で決まりの)ほぼトラ」は時期尚早と展望した上で、今後の情勢を解説した。要旨は次の通り。

6月末にあったバイデン氏とトランプ氏の討論会。私はテレビ番組で解説をしていた。小さい画面で見ていたのもあって、音声だけを聞くとバイデン氏は問題ないと思った。だが、映像ではトランプ氏が圧倒的に勢いがあるように感じ、3歳の年の差以上にバイデン氏の弱さが見えた。

7月13日にトランプ氏が撃たれたこともあり、多くの人は「ほぼトラだよね」と言われるが、時期尚早だと思っている。最近の世論調査でも2ポイントだけトランプ氏が有利になっただけだ。過去の選挙でも2~4ポイントは誤差のレベルだ。討論会は全く決定的ではなく、トランプ氏への銃撃でもあまり変わらなかった。

オバマ氏、トランプ氏、バイデン氏で米国内の分断が目立ち、世の中の見方がだいぶ変わった。共和党支持者にとってみれば、トランプ氏は世の中を変えてくれるヒーロー。民主党支持者からすれば劇薬でしかない。同じことはバイデン氏でも言える。米国では党派色が強くなればなるほど選挙に行く。やる気がない無党派が大きなポイントだ。

バイデン氏はどうなるか。私はずっと下りるはずがないと言ってきた。代わる候補がいない上に、8月上旬までに候補を決めるため間に合わないのが理由だった。討論会の時も近年のいつものバイデン氏だった。

ただ、雲行きが変わってきた。俳優のジョージ・クルーニー氏が「もう代えるべきだ」と言い出した。元下院議長のペロシ氏も声を上げ始めた。バイデン氏が代わる確率が高くなっている。代わるなら副大統領のハリス氏しかいない。

無党派で出る謎の男が一人いる。ロバート・ケネディ・ジュニア氏だ。ネバダやミシガンなど激戦州に出る。全世界からの米軍撤退やイスラエルへの徹底支援などを主張し、恐らくトランプ票を奪う。通常の競り方以上に競る。もしかしたら民主党が勝つと言い続けているが、それは民主党が強いからではない。

トランプ氏が復帰した場合、北大西洋条約機構(NATO)が骨抜きになり、日本も軍事費の増額を求められるかもしれない。台湾の防衛に真剣かどうかも分からない。日本としては「トランプ後」を見据えた工夫が要る。国際協調路線を継続しながら、「米国」がいずれ帰ってくることを考える必要がある。

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵