中国経済クラブ(苅田知英理事長)は11月21日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。共同通信編集委員の川北省吾氏が「大統領選後の米国・世界・日本」と題して話した。第2次トランプ政権は「徹底的に米国第一主義を貫く」と指摘。米国の国際社会への関与が必要最小限となる中、世界で紛争が起きる可能性にも触れ、警鐘を鳴らした。要旨は次の通り。
次期トランプ政権は、連邦最高裁判事も保守派が多数を占めるため、司法、立法、行政の三権を掌握して滑り出す。非常に強力な政権となる。
トランプ氏は大統領就任後、何をするのか。7月の共和党大会で示された党綱領には20項目の「約束」が書かれている。国境を閉じて不法移民を阻止し、製造業の国内回帰を図り、米国第一主義を実行する、などの内容だ。世界は今後、内にこもる米国と付き合っていかなければならない。
ウクライナはどうなるのか。バイデン政権が最近、米国製長射程兵器と対人地雷の使用も容認するという報道があった。駆け込みでこうしたことをするのは、トランプ政権になれば「撃ち方やめ」となってその時点での前線が(国境に)固定化される恐れがあるからだ。政権移行前に、できるだけウクライナに反撃させるためという見方がある。
北朝鮮については、トランプ氏が「核放棄の要求」を降ろすという説がある。そうなれば、韓国でも核保有論がさらに高まる恐れが出てくる。
日本への影響も大きい。貿易面では、日本は再び米国から「標的」にされる可能性があるだろう。鉄鋼や自動車への関税が上乗せされると、日本企業にとって大きな問題だ。石破茂政権は、少数与党で非常に基盤が弱い中で、強力なトランプ政権と対峙(たいじ)しなくてはならない。かなり厳しい時代となるかもしれない。
懸念しているのは、東アジアでの紛争だ。岸田文雄前首相はかねて「今ウクライナで起こっていることが、東アジアで将来起きる可能性」について警鐘を鳴らしていた。内向きの米国は一時的なものでなく、10年単位で続くかもしれない。
東アジアで絶対に紛争を起こさせないために、粘り強く対話をし、日米韓の協力を維持するなど、外交・対話を重視しながら取り組む必要がある。