活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は6月18日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。慶応大法学部の谷口尚子教授が「日本の有権者の政治意識・投票行動の特徴と変化」と題し、若者への主権者教育の重要性を訴えた。要旨は次の通り。

「日本の民主主義はうまくいっているのだろうか」という問いがよくある。国際機関の評価で、日本は100点満点中96点。高い民主化度を誇る。数年置きに各国の国民意識を調べる「世界価値観調査」で、世界的に見て日本人は「政治は重要と思う人」の割合が高い。一方で「政治的問題について行動を起こすよう促す人」の割合は低い。依存的なのが特徴だ。民主主義を根本から学ぶ機会があまりないと考える。

日本の選挙における投票率は低下傾向をたどる。選挙制度改革によって1990年代に大きく落ちた。中選挙区制だった衆院選は、小選挙区比例代表制に変わり、政党と選挙区の候補者の両方を選ばないといけなくなった。さらに、自民党が分裂して政党が離合集散し、分かりにくい政界再編が起きた。

その後、復調の兆しもあった。2009年の民主党政権の誕生だ。選挙が接戦になると、有権者の1票が政権交代を起こすかもしれないという期待に変わる。だが、安倍晋三元首相らによる「強い自民党政権」に戻ったことで「自分が投票へ行っても変わらない」と感じる人が増え、再び投票率は低下傾向にある。

深刻なのは地方選挙。戦後すぐに全国統一で実施した選挙の「統一度」が下がっている。さらに特定候補を与野党相乗りで支援する首長選挙など(選挙戦前から)勝ち負けの構図がはっきりとするのも要因だ。

他国では地方選挙の方が投票率が高い状況にある。生活に身近なのは地域の政治と経済だから。だが、日本は(地方議員の)なり手不足などから、地方政治が危機にひんしている。

21年の衆院選の投票率を年代別で見ると、20代が30%台で最も低く、最も高い60代は70%台だった。投票に行かなければその世代は政治から無視され、損をするという悪循環につながる。

投票で得られる効用が高ければ投票率が向上するという理論がある。主権者教育を進め、投票という義務を果たすことで得られる満足感や民主主義を守る意識の醸成が重要と考えられている。

人気ゲーム「ポケットモンスター」に例えて学生に伝えている。政治家や政党はポケモン。戦わせているのは自分自身。文句はあるが政治が悪いと人任せな感覚ではなく、自分たちこそ主人公であり主権者。ポケモンを育てるつもりで民主主義を支えていくべきだ。

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局長補佐

    道菅 宏信

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵