中国経済クラブ(椋田昌夫理事長)は6月11日、広島市中区の中国新聞ビルで「広島で心配な新たな都市災害と事前防災」と題した講演会を開いた。関西大社会安全研究センター長で、同大社会安全学部の河田恵昭特別任命教授が「災害時に自分は大丈夫だろうと思わず、即座に避難を」と訴えた。要旨は次の通り。(政綱宜規)
広島県で起こりうる自然災害で最も被害が大きくなるのは高潮。続いて津波、地震、洪水、土砂災害と予想される。この並びを「常識」にしてほしい。1メートルの津波は2メートルの洪水と同じエネルギーがある。
南海トラフ巨大地震のマグニチュードが9の場合、広島県内では立てないほどの揺れが3分間続く。3メートル超の津波が6時間以上押し寄せ、養殖漁業は全滅するだろう。広島市沿岸部では、高潮による浸水も起きる。県の被害想定はあくまで一例と考えてほしい。
大災害の新たな捉え方として「相転移」(物質が温度や圧力などの環境変化で別の状態へと劇的に変化する物理現象)という考え方がある。液体の水が氷になり、高濃度の湿気が線状降水帯になるのがその代表だ。
この「相転移」は災害時の社会現象でも起きていると考えられる。地震であれば地盤の液状化や大規模な停電、津波なら避難行動の遅れや過信だ。実際、東日本大震災では、多くの住民が避難しなかったことが分かっている。
広島市沿岸部ではどうか。大きな津波災害を経験していないため、仮に大津波警報が出ても、同じように避難しないことが想定される。人口密度は全国平均の18倍。逃げない人が多数になる「相転移」が起これば、都市災害となり、死者は想定の11倍になる恐れがある。
災害に関する多くの情報が蓄積していくと、以前より安全になったという錯覚も生まれる。ハザードマップの想定は正確なのに、実際に市民が被害を想像するのは難しくなっている。
的を絞った対策が必要だ。例えば「逃げる」ことだ。土砂災害では、自宅の2階に逃げることができれば命が助かる確率は大きく上がる。命を守る本質的な情報をもっと周知しないといけない。
私たちは経験していないことは起きないと考えてしまう。この思い込みがいかに危ないか知ってほしい。さまざまな災害のパターンを想定し、自分の身を自分で守れるよう備えを進めてほしい。